
旧車(クラシックカーやネオクラシックカー)を手に入れた喜びも束の間、「自動車保険に加入できるのか」「保険料が跳ね上がるのではないか」といった現実に直面し、頭を抱えるオーナーは少なくありません。特に、初度登録から数十年が経過している車両は、一部の保険会社で引き受けを制限されるケースもあり、保険選びが難航しがちです。
本記事では、筆者が実際に所有している「平成元年式 サバンナRX-7(FC3S)」のネット型保険の契約内容を大公開します。旧車ならではの保険加入の壁や、ネット型と代理店型の違い、悩ましい「車両保険」の考え方など、迷いを解消するための判断基準を徹底解説します。
豊富な実例をもとに、大切な旧車と長く付き合うための最適な保険選びをサポートします。
この記事のポイント
- 旧車の保険引き受け事情と車両保険が厳しい理由
- 【実例】平成元年式RX-7のネット型保険の契約内容と保険料
- ネット型・代理店型・専用保険の価格と補償比較の全体像
- 対物超過特約や弁護士費用特約など旧車に必須の選択肢と判断基準
旧車の自動車保険選びが難しい理由と現状

一般的な現行車と異なり、なぜ旧車の自動車保険選びは一筋縄ではいかないのでしょうか。まずは、保険会社が旧車をどのように評価しているのか、その背景と現状を整理します。
なぜ旧車は保険に加入しづらいのか?
- リスク評価を画一的に行うのが難しい
- 並行輸入車などは「型式不明」になりやすい
- 故障によるロードサービス利用頻度が高い
旧車が一般的な自動車保険(特にネット型)に加入しづらい最大の理由は、「リスク評価の難しさ」にあります。自動車保険の保険料は、車の型式ごとの事故実績(型式別料率クラス)をもとに算出されます。しかし、年式が古く流通台数が極端に少ない車は、十分な統計データが取れず、正確なリスク評価が困難です。
また、安全装備(エアバッグやABS、自動ブレーキなど)が現代の車に比べて乏しいため、万が一の事故発生時に搭乗者の被害が大きくなる傾向があることも、保険会社が慎重になる要因です。
さらに、海外からの並行輸入車や、エンジンスワップなどの大幅な改造が施されている車両の場合、車検証上の型式が「不明」や「改」となることがあります。ネット型自動車保険の多くは、システム上で標準的な型式しか受け付けていないため、この時点で見積もりすらできず弾かれてしまうことが多々あります。
車両保険の引き受け可否と旧車の市場価値
- 市場価値(プレミア価格)と帳簿上の時価額の乖離
- 修理部品の枯渇による「修理不能」リスク
- 多くの保険会社で旧車の車両保険は引き受け不可
旧車オーナーにとって最も頭を悩ませるのが「車両保険」の扱いです。通常の自動車保険の車両保険金額は、新車時からの年数経過による「時価(減価償却後の価値)」を基準に算出されます。
近年、国産スポーツカーを中心とした旧車の市場価格は異常なほどの高騰を見せています。しかし、保険会社の帳簿上では、初度登録から10年以上経過した車の価値は「1割程度」または「ゼロ(下限の10万円程度)」として扱われるのが一般的です。つまり、市場で500万円で取引されている車であっても、通常の車両保険では数十万円しか補償されないという大きな乖離が生まれます。
さらに、メーカーからの純正部品の供給が終了(廃盤)していることが多く、事故を起こしても「部品がないため修理不可能」と判断され、全損扱いになるケースが後を絶ちません。こうしたトラブルを防ぐため、多くの保険会社は一定年数を超えた旧車への車両保険の付帯をあらかじめ断る措置をとっています。
【実例公開】平成元年式RX-7(FC3S)の契約内容

「旧車はネット型保険に入れない」「保険料が高い」というのは、必ずしも真実ではありません。条件さえ合致すれば、リーズナブルに充実した補償を得ることが可能です。ここでは、筆者の実契約データを公開します。
ネット型自動車保険(ソニー損保)での実契約データ
- 平成元年式(35年落ち)でもネット型に加入可能
- 年間保険料は約2.8万円(18等級の場合)
- 走行距離や運転者限定で保険料を最適化
筆者が実際に契約しているのは、ソニー損害保険(ネット型)の「総合自動車保険TypeS」です。対象車両は「平成元年(1989年)式 マツダ サバンナRX-7(FC3S)」。初度登録から35年以上が経過し、積算距離計も12万kmを超えている立派な旧車ですが、全く問題なくネット型保険で契約を継続できています。
実際の契約条件と保険料は以下の通りです。
- 年間保険料: 28,950円(1回払)
- ノンフリート等級: 18等級(事故あり係数0年)
- 運転者限定: 本人に限定
- 年齢条件: 30歳以上補償
- 使用目的: 主に家庭用
- 年間走行距離: 3,000km以下
- 免許証の色: ゴールド
旧車は週末の趣味として乗ることが多いため、「年間走行距離3,000km以下」「本人限定」など、実態に合わせて条件を絞り込んでいます。等級が高いことも要因ですが、年間3万円以下という非常に安価な保険料で維持できています。車検証に正式な型式(FC3S)が記載されている国産旧車であれば、このようにネット型保険の恩恵を十分に受けることが可能です。
補償内容の取捨選択ポイント
- 車両保険はあえて「なし」と割り切る選択
- 相手への補償は「対人・対物無制限」が絶対条件
- 自身のケガには「人身傷害(5,000万円)」で備える
保険料を安く抑えつつ、本当に必要な補償を確保するための「取捨選択」が旧車の保険選びの醍醐味です。筆者の補償内容のポイントを解説します。
最大の決断は、車両保険を「なし」としている点です。前述の通り、FC3Sも現在プレミア価格が付いていますが、通常の車両保険では万が一の全損時に十分な補償が得られません。中途半端な車両保険をつけて保険料を跳ね上げるくらいなら、「事故を起こした際の自車の修理代は自腹(貯金から出す)」と割り切り、浮いた保険料を日々のメンテナンス代に回す方が現実的と判断しています。
一方で、絶対に削ってはいけないのが相手への補償です。「対人賠償」と「対物賠償」は当然ながら「無制限」に設定しています。旧車はブレーキ性能などが現代の車に劣る場面もあるため、加害者になってしまった場合の備えは万全にしておくべきです。
また、古い車は衝突安全ボディではないため、事故時の搭乗者のダメージが大きくなるリスクがあります。そのため、自分や同乗者のケガの治療費を実費でカバーしてくれる「人身傷害(5,000万円)」はしっかりと付帯しています。
旧車における自動車保険の比較・選択基準

旧車の保険選びにおける主な選択肢は、「ネット型」「代理店型」「クラシックカー専用保険」の3つに大別されます。それぞれの特徴を比較し、ご自身の状況に合わせた選択基準を明確にしましょう。
ネット型 vs 代理店型 vs クラシックカー専用保険
- 保険料の安さと手軽さなら「ネット型」
- 個別事情の相談とサポート力なら「代理店型」
- 車両価値を正当に評価して守りたいなら「専用保険」
それぞれの保険タイプの違いを、以下の比較表にまとめました。
| 比較項目 | ネット型(ダイレクト型) | 代理店型 | クラシックカー専用保険 |
| 保険料の目安 | 非常に安い | やや高い〜高い | 高い |
| 加入のしやすさ | 型式があれば容易(改造車等は不可) | 担当者の裁量や個別審査で柔軟に対応 | 加入条件が厳格(年式、保管状況等) |
| 車両保険の扱い | 原則付帯不可(または時価額のみ) | 交渉次第で協定価額特約がつく場合あり | 市場価値(鑑定額)で付帯可能 |
| 事故時の対応 | 電話・ネット中心の合理的な対応 | 担当者が間に入り親身にサポート | 専門知識を持つ鑑定人や工場と連携 |
| おすすめな人 | 維持費を抑えたい、標準的な国産旧車オーナー | 改造車に乗っている、対面で相談したい人 | 希少車で、万が一の全損時に資金を回収したい人 |
筆者のように、国産スポーツカーで車検証上の型式がはっきりしており、維持費を抑えたい場合は「ネット型」が圧倒的におすすめです。
一方で、フルカスタム車や型式不明車の場合はネット型では契約できないため、街の車屋さんなどが代理店となっている「代理店型」に頼ることになります。
そして、「どうしても今の市場価値(例:500万円)で車両保険をかけたい」という強い要望がある場合は、条件は厳しいですが、専門の鑑定人が価値を評価してくれる「クラシックカー専用保険」を選ぶことになります。
旧車に必須の特約とロードサービス
- 相手の古い車を守る「対物超過修理費用特約」
- もらい事故での泣き寝入りを防ぐ「弁護士費用特約」
- 旧車の命綱となる「手厚いロードサービス」
保険会社を問わず、旧車の保険を組み立てる上で「絶対に外してはいけない3つのポイント」があります。筆者の契約内容にも全て組み込まれています。
1. 対物超過修理費用特約(無制限または50万円限度)
自分が加害者になった際、相手の車が古いと「時価額」が低く評価されます。相手の車の修理代が時価額を上回ってしまった場合、対物賠償だけでは時価額までしか支払われず、差額を巡って大きなトラブルになります。この差額を補填するのがこの特約です。旧車乗り同士、相手の車をしっかり直してあげるための「マナー」とも言える必須特約です。
2. 弁護士費用特約(自動車・日常事故)
旧車は、信号待ちでの追突などの「100%もらい事故」の被害に遭うリスクも常にあります。もらい事故の場合、自身の保険会社は示談交渉を代行できません。相手の保険会社から「あなたの車は古いから時価額は10万円です」と足元を見られた際、素人が交渉を覆すのは至難の業です。専門家である弁護士に交渉を依頼し、正当な価値(修理費)を勝ち取るために、この特約は旧車にとっての最強の盾となります。
3. 充実したロードサービス
旧車に乗る以上、出先での予期せぬエンジントラブルや部品の破損による自走不能リスクは避けられません。保険を選ぶ際は、保険料だけでなく「無料のレッカー搬送距離」を必ず確認してください。指定工場まで距離無制限、あるいは数十kmまで無料といったロードサービスが充実している保険会社を選ぶことで、旧車ライフの安心感が劇的に向上します。
旧車オーナーのための保険選択診断

ここまで比較してきても「結局どれにすればいいのか」と迷う方のために、車の使い方とオーナーの価値観に合わせた選択の目安を示します。
使い方と価値観に合わせた選び方
- 修理代は自腹と割り切れるか
- 車の希少性と市場価値はどの程度か
- 改造の度合いと車検証の記載内容
【パターンA:標準的な国産旧車で、とにかく維持費を抑えたい方】
▶ 結論:ネット型自動車保険 + 車両保険なし
筆者の実例と同じスタイルです。週末のドライブが中心で、事故時の修理は自分の貯蓄から出すと割り切れる方に最適です。浮いた保険料を定期的なオイル交換や消耗品の交換費用に回すことで、結果的に車のコンディションを良好に保つことができます。
【パターンB:並行輸入車やフルカスタム車で、ネット型で弾かれた方】
▶ 結論:代理店型自動車保険
車検証の型式が「不明」や「改」となっている場合は、迷わず代理店に相談しましょう。日頃からメンテナンスをお願いしている旧車専門ショップが保険代理店を兼ねている場合、そこに任せるのがベストです。万が一の事故の際も、修理のノウハウを持つショップが保険会社との窓口になってくれるため非常に心強いです。
【パターンC:数千万円クラスの希少車で、万が一の損失に耐えられない方】
▶ 結論:クラシックカー専用保険
世界的に価値が認められているヒストリックカーなどを所有し、「この車を事故や盗難で失ったら金銭的に立ち直れない」という方におすすめです。年間の走行距離制限や屋根付きガレージ保管など厳しい条件はありますが、車両の歴史的価値を正当に評価して守ってくれる唯一の選択肢です。
まとめ
- 国産旧車(型式あり)なら、安いネット型保険でも十分加入可能
- 車両保険はあえて外し、「対物超過」「弁護士特約」でリスクを徹底カバー
- 車の希少性や予算に応じて、ネット型・代理店型・専用保険を賢く使い分ける
旧車だからといって、必ずしも高額な保険料を支払い、不利な条件を飲まなければならないわけではありません。自分の車の型式や使用状況を正確に把握し、車両保険に対するスタンスを明確にすることで、適正な価格で強力な補償を手に入れることができます。
まずは現在ご所有、あるいは購入予定の旧車の車検証を手元に置き、ネット型保険の見積もりから試してみてください。万が一ネット型で断られた場合は、代理店型やクラシックカー専用保険へとステップアップしていく手順を踏むことで、あなたと愛車に最適な保険が必ず見つかるはずです。
万全の備えを整え、不安のない豊かな旧車ライフをお楽しみください。
※本記事で紹介している保険料や補償内容は、筆者の契約時点(2026年5月)および特定の条件に基づいた一例です。実際の保険料や引き受けの可否は、車種や条件、保険会社の規定改定により異なります。ご契約の際は、必ず各保険会社の最新の約款や見積もりをご確認ください。