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メルセデスベンツSクラスの歴史|なぜ世界基準であり続けるのか

2024年12月13日

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メルセデスベンツSクラス(W223)

「Sクラス以前か、Sクラス以後か」。自動車の歴史において、メルセデス・ベンツSクラスは常に「指標」としての役割を担ってきました。多くのオーナーがSクラスを選ぶ理由は、単なる高級車としてのステータスだけではありません。そこには創業以来の哲学である「最善か無か(Das Beste oder nichts)」に基づいた、一切の妥協を許さないエンジニアリングの歴史が存在するからです。

なぜ、Sクラスはいつの時代も「世界最高の車」と称されるのか。本記事では、その理由を初代モデルから現行に至る進化の軌跡とともに紐解きます。特に、今なお「最高傑作」との呼び声高いW126の魅力から、最新のテクノロジーまで、Sクラスが世界にもたらした革新の数々を探求していきましょう。

この記事のポイント

  • Sクラスが「世界最高の車」と呼ばれるエンジニアリングの哲学的背景
  • [メルセデスベンツ Sクラス]の歴史を変えた「W126」の圧倒的な完成度と魅力
  • ABSやエアバッグなど、Sクラスから世界へ普及した安全技術の数々
  • 歴代モデル(W126, W140, W223等)の特徴比較と、オーナーとしての選び方

なぜSクラスは「世界最高の車」と呼ばれるのか

メルセデス・ベンツのラインナップにおいて、Sクラスは単なる「一番高いセダン」ではありません。それは、ダイムラー社が持てる技術のすべてを注ぎ込み、自動車の未来を提示する「ショーケース」としての役割を担っているからです。

「S」の称号が持つ意味と責任(Sonderklasse)

モデル名につく「S」は、ドイツ語の「Sonderklasse(ゾンダークラッセ)」の頭文字に由来します。これは英語で言えば「Special Class」、つまり「特別級」を意味します。

1972年のW116型で初めて正式に「Sクラス」という呼称が使われるようになりましたが、その精神は戦前の高級車から脈々と受け継がれています。Sクラスであることは、快適であることはもちろん、その時代の最高水準の安全性と走行性能を備えていることの証明でもあります。オーナーにとって、Sクラスのステアリングを握ることは、自動車工学の最先端に触れることと同義なのです。

妥協なき哲学「最善か無か(Das Beste oder nichts)」

メルセデス・ベンツを語る上で欠かせないのが「最善か無か」というスローガンです。特にSクラスの開発において、この言葉は徹底されています。

コストダウンや生産効率よりも、理想的な性能や安全性を優先する。例えば、ドアを閉めた時の重厚な音ひとつとっても、それは単なる演出ではなく、ボディ剛性や気密性を追求した結果の副産物です。この妥協なき姿勢こそが、10年、20年と時を経ても色褪せないSクラスの価値を支えています。

時代を創造した歴代Sクラスの全軌跡

Sクラスの歴史を振り返ることは、そのまま自動車の安全技術と快適性の進化の歴史を振り返ることになります。ここでは、その偉大な足跡を辿ります。

【黎明期】Sクラスの前身(Ponton / Fintail)

W112
W112

正式にSクラスと呼ばれる以前、1950年代の「ポントン(W180/W128)」や1960年代の「ハネベン(W111/W112)」と呼ばれるモデルたちがその礎を築きました。

特に重要だったのは、ベラ・バレニーによる「衝突安全ボディ」の発明です。キャビンを頑丈なケージとし、前後を潰れやすくして衝撃を吸収するこの構造は、現在のすべての自動車の安全設計の基礎となっています。

【確立期】初代W116と名車W126の黄金時代

W116
W116

1972年、初代SクラスとなるW116が登場します。大型の横長ヘッドライトと、雨天時の視認性を高める凹凸のあるテールランプが特徴です。世界で初めてABS(アンチロック・ブレーキ・システム)をオプション設定したのもこのモデルでした。

そして1979年、Sクラスの歴史、いや世界の高級車の歴史において金字塔となる2代目、W126が登場します。

史上最高傑作との呼び声高い「W126」の深層

W126
W126

W126は、1979年から1991年までの12年間という、Sクラス史上最長のモデルサイクルを誇りました。生産台数はセダンだけで80万台を超え、クーペ(SEC)を含めると89万台以上。これはSクラス史上最も成功したモデルとしての記録です。なぜW126はこれほどまでに愛されたのでしょうか。

1. ブルーノ・サッコによる不朽のデザイン

W126のデザインを指揮したのは、伝説的デザイナーのブルーノ・サッコです。彼は「無駄な装飾を排した機能美」を追求しました。先代W116の重厚さを残しつつ、空気抵抗係数(Cd値)は当時の大型セダンとしては異例の0.36(後期はさらに向上)を達成。バンパーとボディを一体化させたデザインや、「サッコ・プレート」と呼ばれるサイドプロテクトモールは、機能性と美しさを完璧に融合させていました。

2. 「過剰品質」直前の完璧なバランス

W126は「エンジニアがコストを気にせず作りたいものを作れた最後のメルセデス」と評されることがあります。しかし、次世代のW140のような巨大化・重量化の道ではなく、W126は「軽量化と高剛性」のバランスを極めました。高張力鋼板を多用し、先代より軽量化しながら強度は向上。ドアの開閉フィール、スイッチ類の操作感、ベロアや本革シートの質感など、アナログ的な機械製品としての完成度が頂点に達していた時期です。

3. 安全技術の民主化

運転席エアバッグ、シートベルトプリテンショナーといった、現代では当たり前の装備を世界に先駆けて実用化・普及させたのもW126です。

現在でもW126は「ネオクラシック・ベンツ」の筆頭として、世界中で高値で取引されています。「電子制御に頼りすぎない最後のSクラス」として、その乗り味は今なお多くのドライバーを魅了してやみません。

【革新期】重厚なるW140からハイテクW220への転換

W140
W140

1991年、W126の後を受けて登場したのが3代目W140です。「最善か無か」を極限まで突き詰めた結果、ボディは巨大化し、二重ガラスを採用するなど、まるで「金庫」のような静粛性と快適性を実現しました。しかし、その大きさゆえに環境意識の高まりや当時の経済情勢とは折り合いがつかず、「恐竜」とも揶揄されました。それでも、その圧倒的な重厚感は今も一部に熱狂的なファンを持ちます。

W220
W220

1998年、4代目W220はその反動とも言える劇的な変化を遂げました。ボディをコンパクトにし、徹底的な軽量化と流麗なデザインを採用。エアサスペンション(AIRMATIC)を標準装備し、IT技術を大幅に取り入れました。Sクラスが「機械」から「ハイテクデバイス」へと舵を切った転換点です。

【現代】W221からW222、そして最新W223へ

W221
W221

2005年登場の5代目W221は、W220で批判された質感不足を解消し、オーバーフェンダーを持つ力強いデザインへと回帰しました。

W222
W222

2013年の6代目W222では、「インテリジェントドライブ」を掲げ、カメラとレーダーで路面を読み取りサスペンションを制御する「マジックボディコントロール」を搭載。乗り心地は「魔法の絨毯」と形容されました。

W223
W223

そして2020年、現行となる7代目W223が登場。物理ボタンを極限まで減らした大型ディスプレイ中心のインテリア、ARナビゲーション、後輪操舵(リア・アクスルステアリング)など、デジタル化と走行性能をかつてない次元で融合させています。

自動車の歴史を変えたSクラスの「世界初」技術

Sクラスの歴史を語る上で欠かせないのが、Sクラスから始まり、世界中の車へ普及していった安全技術です。

安全技術のパイオニアとしての功績(ABS・エアバッグ)

技術名導入モデル概要
ABS(アンチロック・ブレーキ)W116 (1978)急ブレーキ時のタイヤロックを防ぎ、操舵性を確保するシステム。
SRSエアバッグW126 (1981)シートベルトの補助拘束装置として実用化。
ESP(横滑り防止装置)W140 (1995)車両の横滑りを感知し、自動的にブレーキをかけて挙動を安定させる。
PRE-SAFE(プレセーフ)W220 (2002)衝突不可避と判断した瞬間に、シートベルト巻き上げや窓を閉じるなどして乗員を守る。

これらの技術は、特許公開などを通じて他メーカーにも普及しました。「Sクラスにある機能は、10年後の大衆車に装備される」という格言は、決して誇張ではないのです。

快適性を科学する(エアサスペンション・PRE-SAFE)

安全性だけでなく、快適性においてもSクラスは革新的でした。W220から標準化されたエアサスペンション「AIRMATIC」は、雲の上を走るような乗り心地を実現。さらにW222以降のカメラによる路面スキャン技術は、段差の衝撃を「予測して消す」という領域に達しています。

これらは単に乗り心地が良いだけでなく、長距離運転での疲労を極限まで減らすことで、結果的に安全運転(アクティブセーフティ)に寄与するという設計思想に基づいています。

これからのSクラスとオーナーシップの価値

Sクラスを選ぶということは、単なる移動手段を選ぶ以上の意味を持ちます。それは、自動車という文化遺産を継承することでもあります。

クラシックか最新か? 世代ごとの選び方と魅力

現在、Sクラスのオーナーになるには大きく分けて2つの選択肢があります。

一つは、W126やW140といった「ヤングタイマー(ネオクラシック)」を選ぶ道です。

これらは現代の車にはない、濃密な機械の手触りがあります。ドアを閉める音、ステアリングからのインフォメーション、金属パーツの質感。維持には手間と知識が必要ですが、それを補って余りある「本物を所有する歓び」があります。特にW126の良質な個体は年々減少しており、文化財を保護するような覚悟と情熱を持って接する価値があります。

もう一つは、最新のW223を選ぶ道です。

ここには人類が到達した自動車工学の最先端があります。世界最高峰の安全性に守られ、究極の快適空間で移動する。ビジネスの第一線で戦うリーダーにとって、移動時間を質の高い休息や思索の時間に変えるための、これ以上ないツールとなるでしょう。

電動化時代におけるSクラスの未来

電気自動車ブランド「メルセデスEQ」から「EQS」が登場した今、Sクラスの立ち位置も変化しつつあります。しかし、内燃機関(エンジン)を搭載したフラッグシップとしてのSクラスの価値は、むしろ高まっているとも言えます。

100年以上にわたり磨き上げられてきたエンジンの鼓動と、最新のデジタル技術の融合。次世代への過渡期にある今だからこそ、完成されたSクラスを味わうことには大きな意義があります。

まとめ

メルセデス・ベンツSクラスの歴史は、そのまま「自動車がいかにして人を安全に、快適に運ぶか」を追求してきた人類の挑戦の記録です。

中でもW126が示した「機能美と耐久性」、その後のモデルが切り拓いた「ハイテクと安全性の融合」。どの世代のSクラスを選んだとしても、そこには必ず「最善」を目指したエンジニアたちの魂が宿っています。

Sクラスのステアリングを握るとき、あなたはその長い歴史と哲学の一部となります。それは、世界中のドライバーが憧れる、最も誇り高い特権の一つと言えるでしょう。

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