
発売から30年以上が経過した今なお、R32 GT-Rの人気は衰えを知りません。1989年の登場以来、その圧倒的な性能とレース実績で多くのファンを魅了してきたR32 GT-Rは、現代でも熱狂的な支持を集めています。
なぜこれほどまでにGT-Rの人気は継続しているのでしょうか。それは単なるノスタルジーだけではありません。RB26DETTエンジンが持つポテンシャルや、全日本ツーリングカー選手権での29連勝という輝かしい実績、そして現代でも色あせないデザイン性など、R32 GT-Rには確かな価値があります。
本記事では、この伝説的モデルが30年以上にわたって支持され続ける理由について、詳しく解説していきます。
R32 GT-Rが誇る革新的なメカニズムと性能

1989年に登場したR32 GT-Rは、その革新的な技術で自動車業界に衝撃を与えました。RB26DETTエンジンは、公称出力280馬力という数値を超える実力を秘め、四輪駆動システムATTESAと組み合わさることで、比類なき走行性能を実現しました。
RB26DETTエンジンの特徴と魅力
2.6リッターの直列6気筒エンジンに並列ツインターボを組み合わせたRB26DETTは、高回転まで力強く回り続ける特性と、驚異的なチューニングポテンシャルを持ちます。
日産 スカイライン GT-R (BNR32型) 1989年モデル
項目 | 仕様 |
---|---|
年式 | 1989年 |
型式 | BNR32型 |
全長 | 4,545mm |
全幅 | 1,755mm |
全高 | 1,340mm |
ホイールベース | 2,615mm |
トレッド (前/後) | 1,480/1,480mm |
車両重量 | 1,430kg |
エンジン | RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 2568cc |
最高出力 | 206kW(280ps)/6,800rpm |
最大トルク | 353N・m(36.0kgf・m)/4,400rpm |
サスペンション (前/後) | マルチリンク/マルチリンク(独立) |
ブレーキ (前/後) | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
タイヤ | 225/50R16 92V |
出典:日産自動車
ATTESAシステムの革新性
電子制御の四輪駆動システムATTESAは、路面状況に応じて前後の駆動力配分を最適化。通常走行時はリアドライブを基本としながら、コーナリングや加速時には最適な駆動力配分を実現し、卓越した運動性能を引き出します。
チューニングの可能性と実力

ベースエンジンの潜在能力
RB26DETTの特徴は、高い耐久性と600馬力以上を引き出せるチューニングポテンシャルにあります。エンジンブロックの強度や冷却性能の余裕度の高さは、現代のチューナーからも高い評価を受けています。
人気のチューニングパーツ
サーキット走行やストリート用に、タービン、インタークーラー、強化クラッチなど、信頼性の高いチューニングパーツが今なお開発され続けています。
伝説を作ったレース活動とその輝かしい実績

モータースポーツの世界でR32 GT-Rは圧倒的な強さを見せ、「GODZILLA(ゴジラ)」の異名を得ました。特に全日本ツーリングカー選手権(JTC)での活躍は、GT-Rの伝説を確立する重要な出来事となりました。
全日本ツーリングカー選手権(JTC)での29連勝
1990年から1993年にかけて、R32 GT-Rは全日本ツーリングカー選手権で29連勝という驚異的な記録を打ち立てました。この圧倒的な強さは、当時のモータースポーツ界に衝撃を与え、競合他社は「GT-Rキラー」の開発に躍起になりました。
スカイラインGT-R グループA カルソニック
1989年(平成元年)8月、8代目スカイラインR32型で劇的な復活を遂げたGT-Rは、翌1990年(平成2年)3月の全日本選手権開幕戦でレースデビューを果たしました。その後、グループAによる全日本選手権が終了する1993年(平成5年)までの4年間、4シーズン全29戦をすべて優勝するという前人未踏の記録を残しました。2568cc直列6気筒DOHCターボエンジンは、550馬力という大出力を発生するまで鍛え上げられていました。このクルマは、カーナンバー「12」を付けて1990年のチャンピオンに輝いたカルソニック・スカイラインチーム(星野一義/鈴木利男組)のレース車仕様です。カルソニックチームは、1993年にも星野一義/影山正彦のコンビで再びシリーズタイトルを獲得しました。
項目 仕様 年式 1990年 型式 BNR32型 全長 4,545mm 全幅 1,755mm 全高 1,340mm ホイールベース 2,615mm トレッド (前/後) 1,610/1,530mm 車両重量 1,250kg以上 エンジン RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 最高出力 405kW(550ps)/7,600rpm 最大トルク 490N・m(50.0kgm)/6,000rpm サスペンション (前/後) マルチリンク/マルチリンク ブレーキ (前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク タイヤ 265-700-18 その他 1990年全日本ツーリングカー選手権シリーズチャンピオン(星野一義/鈴木利男組) 引用元:日産自動車
ZEXELスカイラインGT-R 1992 N1耐久
1989(平成元)年に16年ぶりの復活を遂げたスカイラインGT-Rは、翌90年シーズンから実戦投入となりました。全日本ツーリングカー選手権(グループA規定)と、新たに立ち上がったN1耐久レース(市販車に近い車両規定)に参戦し、文字通り無敵の強さを発揮しました。この世代は、かつてのGT-Rと異なり、その戦いの場を海外にも求め、'91年には、ゼクセルチームが世界三大耐久レースの1つであるベルギーのスパ・フランコルシャン24時間レースに出場し、総合優勝(Gr.A)とN1クラス(Gr.N)優勝を飾りました。このクルマは1992年のN1耐久選手権にゼクセルチームとして参戦したマシンです。
項目 仕様 年式 1992年 型式 BNR32型 全長 4,545mm 全幅 1,755mm 全高 1,340mm ホイールベース 2,615mm トレッド (前/後) 1,480/1,480mm 車両重量 1,240kg エンジン RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 最高出力 301kW(410ps)/7,200rpm 最大トルク 470N・m(48.0kgm)/4,800rpm サスペンション (前/後) マルチリンク/マルチリンク ブレーキ (前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク タイヤ 225/50R17 その他 1992年N1耐久レース出場車(山田英二/木下隆之組) 引用元:日産自動車
スカイラインGT-R グループA 1993年JTC・STPタイサンGT-R
1993年の全日本ツーリングカー選手権は、長谷見昌弘/ 福山英朗組のユニシアジェックススカイライン、 星野一義/ 影山正彦組のカルソニックスカイラインなど、R32型スカイラインGT-R 同士がデッドヒートを繰り広げました。 R32型スカイラインGT-R の国内グループAレース29連勝という記録は、もはやR32型でなければ勝てず、有力チームがこぞってR32型どうしでしのぎを削った結果ともいえます。このスカイラインSTPタイサンGT-Rは、日本レース界を牽引してきた高橋国光選手と、人気者で実力者の「ドリキン」こと 土屋圭市選手が駆ったR32GT-Rです。
項目 仕様 年式 1993年 型式 BNR32型 全長 4,545mm 全幅 1,755mm 全高 1,320mm ホイールベース 2,615mm トレッド (前/後) 1,610/1,530mm 車両重量 1,260kg以上 エンジン RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 最高出力 404kW(550ps以上)/7,600rpm 最大トルク 490N・m(50.0kgm以上)/6,000rpm サスペンション (前/後) マルチリンク/マルチリンク ブレーキ (前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク タイヤ 265-700-18 その他 1993年 JTC Gr. A No. 2 STPタイサンGT-R 引用元:日産自動車
時代を超えて愛される洗練されたデザイン

R32 GT-Rのデザインは、空力性能と美しさを高次元で融合させました。直線基調のシャープなボディラインと迫力のあるワイドフェンダーは、30年以上経った今でも色褪せない魅力を放ちます。
空力性能を追求した機能美
R32 GT-Rは、徹底した風洞実験により開発された空力性能の高いデザインが特徴です。当時としては画期的な0.40というCd値を実現し、フロントスポイラー、サイドスカート、リアスポイラーの絶妙なバランスが高速走行時の卓越した安定性を生み出しました。
独自の進化を遂げたGT-Rのスタイリング
ベースとなるGTモデルとは一線を画し、太い水平2本線のグリル、存在感のあるリアスポイラー、特徴的なブリスターフェンダーなど、GT-R独自のアイデンティティを確立しています。R32 GT-Rは過剰な装飾を排除しながらも力強さと機能美を見事に両立させ、歴代GT-Rの中でも最も洗練されたデザインとして高く評価されています。そのシンプルながらも威圧的な佇まいは、GT-Rの理想形と言えるでしょう。
現代でも色褪せない魅力
90年代スポーツカーデザインの黄金期に誕生したR32 GT-Rは、時代を超えた普遍的な魅力を持ち、現代のスポーツカーデザインにも大きな影響を与え続けています。無駄を削ぎ落としたピュアなデザイン哲学は、多くのカーデザイナーにインスピレーションを与え、今なお色褪せることのない存在感を放っています。
グローバルで高まる価値と投資対象としての魅力

R32 GT-Rの価値は、年々上昇の一途を辿っています。特に海外市場での評価は高く、日本車の象徴的存在として確固たる地位を築いています。
JDM文化における象徴的存在
映画「ワイルド・スピード」やレースゲームへの登場により、R32 GT-Rは世界中で日本車のアイコン的存在となりました。JDM(Japanese Domestic Market)文化を代表するモデルとして、特に若い世代から熱い支持を集めています。
海外市場での評価と需要
25年ルールによりアメリカでの輸入が解禁されて以降、R32 GT-Rの市場価値は急上昇。良好なコンディションの個体は、新車価格の数倍の値が付くことも珍しくありません。
まとめ:R32 GT-Rが築いた歴史的価値と今後の展望

R32 GT-Rの30年以上にわたる人気は、単なる懐古的な評価を超えた本質的な価値に基づいています。RB26DETTエンジンとATTESAシステムという革新的な技術、29連勝という輝かしいレース実績、機能美を追求したデザイン、そしてグローバルで高まり続ける価値は、R32 GT-Rの歴史的重要性を物語っています。
GT-Rという名を冠したスポーツカーは、R33、R34、そして現行のR35へと進化を遂げましたが、R32 GT-Rの人気は特別です。それは、このモデルが日本の自動車技術の頂点を象徴する存在だからでしょう。世界中のファンに愛され続けるR32 GT-Rは、今やコレクターズアイテムとしての価値も確立し、クラシックカーとしての新たな歴史を刻み始めています。
環境規制の強化や自動車産業の電動化に加え、日産自動車の経営状況も新型GT-Rの未来に影を落としています。厳しい経営環境の中、高性能スポーツカーの開発は優先順位が下がっているのが現状です。私たちは新しいGT-Rに出会えない可能性も受け入れなければなりませんが、だからこそR32 GT-Rの価値は一層輝きを増しているのかもしれません。R32 GT-Rが築いた伝説は、これからも日本の自動車史に永遠に刻まれ続けることでしょう。