
R32 GT-Rの購入を検討されている方の中には、「R32の基本的な特徴は何か」「他のGT-Rモデルと比べてどんな違いがあるのか」と疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
R32 GT-Rは1989年に発売され、現在も中古車市場で取引が行われています。投資価値としてはR34 GT-Rの方が高い評価を受けていますが、R32には独自の技術的特徴と歴史的意義があります。
本記事では、R32 GT-Rの基本的な特徴を他のGT-Rモデルとの比較を交えながら客観的に解説し、このモデルの位置づけをお伝えします。
この記事のポイント!
- R32 GT-Rの基本スペックと技術的特徴
- 全日本ツーリングカー選手権での具体的なレース実績
- 他のGT-Rモデルとの客観的なスペック比較
- 現在の中古車市場での取引状況
- 購入時に確認すべき具体的なポイント
R32 GT-Rの基本情報と最新動向

R32 GT-Rは1989年に登場した日産スカイラインの最高峰モデルで、16年ぶりにGT-Rの名前が復活した記念すべきモデルです。現在でもその価値は上昇を続けており、投資対象としても注目を集めています。
- R32 GT-Rとは?基本スペックと特徴
- R32 GT-Rの伝説的レース実績
- R32 GT-R 最新価格動向と市場状況
- R32 GT-Rのバリエーションと特別仕様車
- R32 GT-Rのデザインと空力性能
R32 GT-Rとは?基本スペックと特徴

- 搭載エンジン: RB26DETT(2.6L直列6気筒ツインターボ)
- 最高出力: 280馬力(公称値、実際の出力はそれ以上)
- 駆動方式: 電子制御四輪駆動システム「ATTESA E-TS」
RB26DETTエンジンの技術的特徴:
- 2.6リッター直列6気筒エンジンに並列ツインターボを組み合わせ
- 高回転まで力強く回り続ける特性
- セラミックターボ採用による高いレスポンス性
- 鋳鉄ブロックによる高い耐久性
ATTESAシステムの革新性:
電子制御の四輪駆動システムATTESA E-TSは、路面状況に応じて前後の駆動力配分を最適化します。通常走行時はリアドライブを基本としながら、コーナリングや加速時には前輪にも駆動力を配分し、卓越した運動性能を実現しました。
項目 | R32 GT-R仕様 |
---|---|
年式 | 1989-1994年 |
型式 | BNR32型 |
全長×全幅×全高 | 4,545×1,755×1,340mm |
車両重量 | 1,430kg |
エンジン | RB26DETT型 |
最高出力 | 206kW(280ps)/6,800rpm |
最大トルク | 353N・m(36.0kgf・m)/4,400rpm |
R32 GT-Rの伝説的レース実績
- 全日本ツーリングカー選手権29連勝: 1990年〜1993年の4年間、全29戦すべて優勝
- グループA規定: 当時の国際的なレース規定で圧倒的な強さを発揮
- レース仕様出力: 市販車の280馬力から550馬力まで強化
主要なレース実績とマシン詳細:
1990年 カルソニック・スカイラインGT-R:
- ドライバー:星野一義/鈴木利男組でシリーズチャンピオン獲得
- 最高出力:405kW(550ps)/7,600rpm
- 最大トルク:490N・m(50.0kgm)/6,000rpm
- 車両重量:1,250kg以上
1992年 ゼクセル・スカイラインGT-R N1耐久:
- 1991年スパ・フランコルシャン24時間レースで総合優勝(Gr.A)とN1クラス優勝
- 最高出力:301kW(410ps)/7,200rpm
- 最大トルク:470N・m(48.0kgm)/4,800rpm
- ドライバー:山田英二/木下隆之組
1993年 STPタイサンGT-R:
- ドライバー:高橋国光選手と土屋圭市選手
- 最高出力:404kW(550ps以上)/7,600rpm
- R32型GT-R同士のデッドヒートが展開された最終年
この29連勝の実績により、R32 GT-Rは海外で「GODZILLA(ゴジラ)」の異名を得ました。この記録は競合他社の「GT-Rキラー」開発のきっかけとなりました。
R32 GT-R 最新価格動向と市場状況
- 国内中古車市場: 価格帯に幅があり、状態により大きく変動
- 海外市場: アメリカやヨーロッパでも取引が行われている
- 価格変動: 近年大幅な上昇傾向にある
価格は個体の状態、走行距離、整備履歴によって大きく左右されます。R34 GT-Rと比較すると相対的に低い価格帯での取引が行われていますが、R32も近年は高額化が進んでいます。
R32 GT-Rのバリエーションと特別仕様車
標準グレード:
- GT-R(1989年8月発売)
- GT-R Vスペック(1993年2月発売):ブレンボ製ブレーキ装備
- GT-R VスペックII(1994年1月発売):さらなる改良型
限定・特別仕様車:
- GT-R NISMO(1990年):500台限定のコンプリートカー
- オーテックバージョン:オーテックジャパンによるカスタム車
- GT-R N1(1991年):耐久レース用ベース車両
これらのバリエーションにより、幅広いニーズに対応していました。
R32 GT-Rのデザインと空力性能
空力性能を追求した機能美:
R32 GT-Rは、徹底した風洞実験により開発された空力性能の高いデザインが特徴です。当時としては優秀な空気抵抗係数を実現し、以下の空力パーツが高速走行時の安定性を生み出しました:
- フロントスポイラー:ダウンフォース発生とエアフローの整流
- サイドスカート:車体下部の気流を整える
- リアスポイラー:後方でのダウンフォース確保
GT-R独自のスタイリング要素:
- 太い水平2本線のフロントグリル
- 存在感のあるリアスポイラー
- 特徴的なブリスターフェンダー
- 直線基調のシャープなボディライン
R32 GT-Rは過剰な装飾を排除しながらも機能美を追求し、90年代スポーツカーデザインの黄金期を代表するモデルとして、現代のスポーツカーデザインにも影響を与え続けています。
R32 GT-Rの購入ガイドと比較・評価

ここからは、R32 GT-Rと他のGT-Rモデルとの詳細な比較を通じて、あなたにとって最適な選択肢を見つけるためのガイドをお伝えします。
- R33・R34 GT-Rとの性能比較
- R32 GT-Rの価格帯別選び方ガイド
- グローバル市場での評価とJDM文化
- チューニングポテンシャルとカスタマイズ
- R32 GT-Rの生産期間と販売台数
- 自動車産業の変化とGT-Rの未来
- R32 GT-Rの現在の位置づけ
- 購入時の確認ポイント
R33・R34 GT-Rとの性能比較
- R32の特徴: 最軽量(1,430kg)でコンパクトなボディサイズ
- R33の特徴: 車両重量1,540kg、全長4,675mmに大型化
- R34の特徴: 車両重量1,560kg、最新の電子制御技術を搭載
重量とサイズの違いは、それぞれ異なる走行特性をもたらします。
比較項目 | R32 GT-R | R33 GT-R | R34 GT-R |
---|---|---|---|
生産期間 | 1989-1994 | 1995-1998 | 1999-2002 |
車両重量 | 1,430kg | 1,540kg | 1,560kg |
全長 | 4,545mm | 4,675mm | 4,600mm |
総生産台数 | 43,937台 | 16,668台 | 11,134台 |
価格帯の傾向 | 高価格帯 | 高価格帯 | 最高価格帯 |
R32 GT-Rの価格帯別選び方ガイド
- エントリー層(300-500万円): 走行多めでも整備済みのR32 GT-R(GT-R体験への最適な入り口)
- ミドル層(500-800万円): バランスの取れた良質なR32 GT-R個体(長期所有に最適)
- プレミアム層(800-1,200万円): R32の極上車やVスペック、限定モデル
- コレクター層(1,500万円以上): R34への挑戦も視野に
R32 GT-Rの最大の魅力は、本格的なGT-R体験を現実的な価格で楽しめることです。R34が手の届かない価格帯になった現在、R32は多くの人にとって「憧れのGT-Rに乗る」という夢を実現できる唯一の選択肢となっています。
グローバル市場での評価とJDM文化

JDM文化における象徴的存在:
R32 GT-Rは、JDM(Japanese Domestic Market)文化を代表するモデルとして世界的に認知されています。映画「ワイルド・スピード」シリーズやレースゲームへの登場により、特に若い世代から注目を集めています。
海外市場での輸入状況:
- アメリカ市場: 25年ルールにより2014年から輸入可能(R32)
- ヨーロッパ市場: 輸入制限なし
- オーストラリア市場: 1990年代から正規・並行輸入で販売実績
世界的な評価の要因:
- 日本の自動車技術の頂点を象徴する存在
- モータースポーツでの圧倒的な実績
- 独特のスタイリングとパフォーマンス
- チューニング文化の中核的存在
海外での取引は、各国の輸入規制や現地の需要により価格が変動します。特にアメリカでの25年ルール適用により、需要が高まっています。
チューニングポテンシャルとカスタマイズ
RB26DETTエンジンのチューニング特性:
- ベースエンジンの高い耐久性
- エンジンブロックの強度設計
- 冷却性能の余裕度
- チューニングによる大幅なパワーアップが可能
主要なチューニングパーツ分野:
- ターボチャージャー:レスポンス向上や大容量化
- インタークーラー:冷却効率の向上
- エキゾーストシステム:排気効率の最適化
- 強化クラッチ:パワーアップに対応
- サスペンション:サーキット走行対応
NISMOによる公式サポート:
NISMOからはRB26DETTエンジンの完成品(R3仕様など)が販売(ベアエンジンの入手にはおよそ2~3年かかります)されており、公式なチューニングサポートを受けることができます。

写真出典:nismo
R32 GT-Rの生産期間と販売台数
R32 GT-Rは1989年から1994年まで生産され、総生産台数は43,937台でした。この生産台数は、後継のR33(16,668台)、R34(11,134台)と比較して圧倒的に多く、現在でも中古車市場で一定の流通量を確保している理由の一つです。
販売実績の背景:
- 発売がバブル景気末期の1989年
- 高額モデルにも関わらず4万台以上の販売を記録
- 後継モデルの販売台数(R33:約1万6千台、R34:約1万1千台)と比較して突出した数字
自動車産業の変化とGT-Rの未来
現在、自動車産業は大きな変革期を迎えています:
環境規制の強化:
- 世界各国で排出ガス規制が厳格化
- 内燃機関への規制強化
電動化の進展:
- ハイブリッド技術の普及
- 電気自動車(EV)への移行加速
メーカーの経営状況:
- 高性能スポーツカー開発の優先順位変化
- 開発リソースの電動化への集中
このような状況の中で、内燃機関を搭載した高性能車であるGT-Rシリーズの価値は、歴史的資産としての側面がより強まっています。
R32 GT-Rの現在の位置づけ
- GT-R復活モデル: 1973年以来16年ぶりの復活を果たした歴史的モデル
- レース実績: 全日本ツーリングカー選手権29連勝(1990-1993年)の記録保持
- 技術的意義: RB26DETTエンジンとATTESAシステムの組み合わせによる革新性
- 価格帯: R34と比較して相対的に低いものの、高額な投資が必要
- 生産台数: 43,937台で後継モデルより多い
- 文化的価値: JDM文化とチューニング文化の象徴的存在
R32 GT-Rは、GT-R復活の歴史的意義、モータースポーツでの実績、技術的革新性、現在の市場での位置づけという多面的な特徴を持つモデルです。自動車産業の電動化が進む中で、内燃機関による高性能車の歴史的価値はより一層高まっており、それに伴い市場価格も上昇しています。
購入時の確認ポイント
- 整備履歴の確認: エンジンオーバーホール履歴の有無
- 事故歴のチェック: フレーム修正や板金履歴
- 改造の程度: 純正状態からの変更点と改造品質
- 走行距離と年式: 1989-1994年製で現在30年超の車両
- グレードの確認: 標準・Vスペック・VスペックII・限定車等の識別
- 腐食・劣化: 30年超の車両特有の劣化箇所チェック
R32 GT-Rの購入では、車両の状態を総合的に確認することが重要です。特に30年以上経過した車両のため、専門知識を持つ業者での点検が推奨されます。
R32 GT-Rに関するまとめ

- R32 GT-Rは1989年のGT-R復活モデルで、16年ぶりの復活を果たした歴史的意義を持つ
- 全日本ツーリングカー選手権で1990年〜1993年に29連勝を達成し、「GODZILLA」の異名を獲得
- RB26DETTエンジンとATTESAシステムによる革新的な技術の組み合わせ
- 車両重量1,430kgで、後継のR33(1,540kg)、R34(1,560kg)より軽量
- 総生産台数43,937台で、R33(16,668台)、R34(11,134台)より多い
- 空力性能を追求したデザインと機能美の両立
- 豊富なチューニングパーツとNISMOによる公式サポート
- JDM文化の象徴として世界的に認知
- 海外では25年ルール等により一部地域で輸入可能
- 自動車産業の電動化により、内燃機関スポーツカーとしての歴史的価値が高まっている
R32 GT-Rは、GT-R復活という歴史的意義、29連勝という圧倒的なレース実績、RB26DETTエンジンとATTESAシステムという技術的革新性を併せ持つモデルです。日産の901運動の頂点を象徴する存在として開発され、現在でもJDM文化やチューニング文化の中核的存在として世界的に認知されています。
環境規制の強化や自動車産業の電動化が進む現在、内燃機関による高性能スポーツカーは新たな歴史的局面を迎えています。この流れに伴い、R32 GT-Rを含むGT-Rシリーズ全体の市場価値が大幅に上昇しており、現在では高額な投資を伴う車両となっています。R32 GT-Rが築いた技術的・文化的遺産は、日本の自動車史における重要な一章として、今後も語り継がれていくでしょう。