
自動車業界が急速に電動化へと舵を切る中、「まさかあのクルマまでもが」と世界中の自動車ファンを驚かせたニュースがありました。それが、メルセデス・ベンツの象徴とも言える本格オフローダー、Gクラスに初めて量産EVモデルが加わったことです。2024年に発表された「G 580 with EQ Technology(以下、G 580)」は、単にエンジンをモーターに載せ替えただけのモデルではありません。Gクラスの魂である「ラダーフレーム」や「悪路走破性」を維持しながら、4モーター制御や最大渡河水深など、一部の性能では内燃機関モデルを上回る能力を備えています。
しかし、長年のGクラスファンや購入を検討している方にとって、「本当にEVのGクラスは買いなのか?」「V8エンジンの咆哮がなくなるのは寂しい」「重厚な走りは健在なのか?」といった疑問や不安は尽きないはずです。車両価格が2,000万円を超える高級モデルであり、慎重な比較検討が求められる選択となります。
本記事では、Gクラス初のEVモデルであるG 580の特徴と、ディーゼルやAMGといった内燃機関モデルとの違いを詳しく比較・解説します。この記事を最後までお読みいただければ、ご自身のライフスタイルに合ったGクラスを選ぶための判断材料が得られるはずです。
この記事のポイント
- GクラスEV「G 580」の特徴である独立4モーターによる動力性能
- 未舗装路で活用できる「G-TURN」など、EV専用のオフロード機能
- 伝統のラダーフレームと大容量バッテリーがもたらすボディ剛性と乗り心地
- 内燃機関モデル(G 450 d / Mercedes-AMG G 63)とのスペック、価格、ライフスタイル別比較
GクラスのEVモデル「G 580」の基本スペックと特徴

GクラスがEVになると聞いたとき、多くの人が「あの四角くて重いボディで、実用的なEVになるのか?」と疑問を抱いたことでしょう。メルセデス・ベンツは、Gクラスらしさを保ちながら独自のスペックをG 580に与えています。ここでは、G 580の心臓部とも言えるパワートレインや、Gクラスらしさを担保するボディ構造の特徴について詳しく見ていきます。
2026年6月29日時点のメーカー希望小売価格は、通常モデルのG 580 with EQ Technologyが2,237万円(税込)です。価格にはオプション、保険料、登録諸費用などは含まれず、販売価格は正規販売店によって異なる場合があります。なお、発売時に登場した限定車「Edition 1」は通常モデルとは異なる特別仕様であり、本記事では現行の通常モデルを中心に解説します。
各輪独立の4モーターがもたらす動力性能
- 4つのモーターを各車輪の近くに配置し、システム最高出力432kW(587PS)、最大トルク1,164N・mを発揮
- 0-100km/h加速4.7秒というスポーツカーに匹敵する加速性能
- 各モーターを個別制御し、走行状況に応じて駆動力を配分
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G 580の大きな特徴の一つが「4輪独立モーター」の採用です。前後に1つずつのモーターを配置する一般的なAWDのEVとは異なり、G 580は前後アクスルにそれぞれ2つずつ、合計4つのモーターを搭載しています。これにより、システム最高出力は432kW(587PS)、最大トルクは1,164N・mを発揮します。このトルク値は、内燃機関のハイパフォーマンスモデルであるMercedes-AMG G 63の850N・mを上回ります。
車両重量はバッテリーを搭載しているため3,120kgとなりますが、モーターはアクセルを踏み込んだ瞬間から最大トルクを発揮する特性があり、0-100km/h加速はわずか4.7秒とスポーツカーに匹敵する数値です。車両重量が大きい分、制動距離やタイヤ摩耗などへの影響にも注意が必要です。
さらに、各車輪を個別に駆動できるため、機械式デファレンシャルロックに代わり、モーター制御によって各輪の駆動力を緻密に調整できる点が特徴です。各モーターを個別に制御し、走行状況に応じて各輪へ必要な駆動力を配分します。
Gクラスの伝統を継承する強靭な専用ラダーフレーム
- EV化してもモノコックボディに逃げず、伝統のラダーフレーム構造を堅持
- フレーム内にバッテリーを組み込むことで、低重心化を実現
- 飛び石や障害物からバッテリーを守る、カーボンを含む複合素材製のアンダーボディプロテクション

本格オフローダーの証である「ラダーフレーム(はしご型フレーム)」。Gクラスのアイデンティティとも言えるこの構造は、EVモデルであるG 580にも受け継がれています。Gクラス伝統のラダーフレーム構造を継承し、フレーム内に駆動用バッテリーを搭載しています。
最大の特徴は、ラダーフレームの間に大容量のリチウムイオンバッテリーを組み込んでいる点です。バッテリーはラダーフレームに統合する形で搭載され、低い位置に重量物を配置する設計となっています。この設計は、オンロードでの乗り心地や安定感にも寄与しています。
また、オフロード走行時にフロア下を岩などにぶつけた場合のリスクを考慮し、G 580のアンダーパネルにはカーボンを含む複合素材製のアンダーボディプロテクション(厚さ26mm)が装備されています。単にモーターを積んだだけでなく、過酷な環境での使用を想定した設計がなされています。
大容量バッテリーと航続距離、充電性能の現実
- 116kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載
- 空気抵抗の大きいボディながら、一充電走行距離は530km(WLTCモード)を確保
- 普通充電(AC200V)とCHAdeMO規格の急速充電に対応

EVを購入する上で気になるのが「航続距離」と「充電」でしょう。G 580は、空気抵抗の大きいスタイリングでありながら、床下に116kWhの大容量駆動用バッテリーを搭載しています。これにより、一充電あたりの航続距離は530km(WLTCモード)を実現しています。
WLTCモードの一充電走行距離は530kmですが、実際の航続可能距離は外気温、エアコン使用、速度、道路状況、運転方法などによって変動します。日常利用や中距離移動には対応しやすい一方、長距離移動では利用可能な急速充電器と充電時間を事前に確認する必要があります。
また、日本仕様のG 580は、普通充電(AC200V)とCHAdeMO方式の急速充電に対応しています。公式サイトでは、電池残量10%から80%までの充電時間の目安として、150kWタイプで約41分、90kWタイプで約55分、50kWタイプで約106分と案内されています。ウォールユニットの6kW普通充電では、同じく10%から80%まで約14時間が目安です。実際の充電出力や時間は、バッテリー温度、残量、充電器の仕様などによって変わります。また、e-Mobility Powerネットワークの急速充電器は、1回30分で停止する場合があります。自宅充電環境を用意できるかどうかが、日常での使いやすさを大きく左右します。
| スペック項目 | G 580 with EQ Technology |
| パワートレイン | 各輪を個別に駆動する4モーター |
| システム最高出力 | 432kW(587PS) |
| システム最大トルク | 1,164N・m |
| 駆動用バッテリー容量 | 116kWh |
| 一充電走行距離 | 530km(WLTCモード) |
| 0-100km/h加速 | 4.7秒 |
| 車両重量 | 3,120kg |
| 全長 | 4,680mm |
| 全幅 | 1,985mm |
| 全高 | 1,990mm |
| 乗車定員 | 5名 |
EVならではの革新機能!「G-TURN」「G-STEERING」とは

G 580は、単に環境に優しいGクラスというだけではありません。各輪を独立したモーターで制御できるというEVの特性を活かし、内燃機関モデルにはない機能を搭載しています。これらの機能は、未舗装路など特定の状況での使用を想定したものであり、使用条件や周囲の安全確認が必要です。
その場での超信地旋回を可能にする「G-TURN」
- 未舗装路など摩擦の低い路面で、左右のタイヤを逆回転させ、その場での旋回を可能にする機能
- オフロードの行き止まりなどで、切り返し回数を減らせる可能性がある機能
- 所定のオフロードモードと専用操作によって作動する、EVならではの機能
G 580を象徴する機能の一つが「G-TURN(Gターン)」です。これは、未舗装路など摩擦の低い路面において、左側のタイヤと右側のタイヤをそれぞれ逆方向に回転させることで、その場での旋回(超信地旋回)を可能にする機能です。公道や舗装路で自由に使用するための機能ではなく、周囲の安全を十分に確認したうえで、取扱説明書に従って使用する必要があります。
例えば、林道などの狭いオフロードで行き止まりに遭遇した場合、車体の大きいGクラスで切り返しを繰り返すのは容易ではありません。G-TURNを使えば、その場で車体の向きを変えることができ、来た道を戻りやすくなります。ただし、使用可能な条件や周囲の安全確認については、取扱説明書の指示に従う必要があります。
所定のオフロードモードと専用操作を選択することで作動します。詳しい作動条件や操作方法は取扱説明書で確認する必要があります。
オフロードでの小回り性能に関わる「G-STEERING」
- 4輪それぞれの駆動トルクを制御し、未舗装路での旋回半径を小さくする機能
- タイトな林道や岩場でのコーナリングを支援
- EVならではの緻密な駆動力制御による機能
「G-TURN」がその場での旋回だとすれば、「G-STEERING(Gステアリング)」は、走行中の小回りに関わる機能です。4輪それぞれの駆動トルクを制御し、未舗装路での旋回半径を小さくする機能です。狭い未舗装路やタイトなコーナーで、切り返し回数の低減を支援します。ただし、路面状況や周囲の安全確認は必要です。
ホイールベースが長く、車幅もあるGクラスは、タイトなコーナーが苦手になりやすい傾向があります。G-STEERINGは、4モーターによる駆動力配分(トルクベクタリング)を活用し、未舗装路でのコーナリングを支援する機能です。
専用ドライビングサウンド「G-ROAR」
- 走行状況に応じて変化する、G 580専用のドライビングサウンド
- 走行状況に応じて音色や音量が変化する、専用のサウンド
- 静粛な走行と専用サウンドを、状況に応じて選択できる
長年のGクラスファンがEV化に際して懸念する点の一つが、「あのV8エンジンのサウンドがなくなってしまうのではないか」という点でしょう。G 580には「G-ROAR(Gロア)」と呼ばれる専用のドライビングサウンド機能が搭載されています。
G-ROARは、走行状況に応じて変化するG 580専用のドライビングサウンドです。EVの静粛性を保ちながら、加速時などに聴覚的な演出を加えます。
GクラスEV「G 580」と内燃機関モデル(G 450 d / Mercedes-AMG G 63)の違いを比較
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Gクラスを選ぶ際、これまでは「ディーゼルモデルのG 450 d」か、「V8ガソリンのMercedes-AMG G 63」か、という2択が基本でした。ここに「EVモデルのG 580」という第3の選択肢が加わったことで、検討の幅が広がっています。ここでは、ライフスタイルや求める価値観に合わせて、それぞれの特徴を比較します。
静粛性と乗り心地の違い
- パワートレイン由来の振動や音が少ない車内空間
- バッテリーを低い位置に搭載したことによる、安定感のある乗り心地
- 早朝・深夜の出発などでエンジン音や振動が気になる場合に選択肢となる
エンジンを搭載しないため、内燃機関モデルと比べてパワートレイン由来の振動や音が少ないことが特徴です。一方で、タイヤノイズや風切り音、モーター音などが完全になくなるわけではありません。
床下にバッテリーを搭載することで重心位置を抑えやすく、オンロードでの安定感や乗り心地にも寄与します。ただし、3,120kgという大きな車両重量は、制動、タイヤ摩耗、取り回しなどにも影響します。
早朝や深夜の出発が多い方や、エンジン音・振動が気になる方にとって、静粛性は選択の判断材料の一つになります。
オフロード性能の比較
- 最大渡河水深はG 580が850mm、内燃機関モデルは700mm
- モーター制御により、低速域でのアクセル操作を支援
- 低速オフロード走行を支援する「クロール機能」を搭載
「バッテリーを積んだEVで水の中や泥だらけの悪路を走れるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。G 580は、オフロード性能を維持する設計がなされています。
G 580の最大渡河水深は850mmで、現行の内燃機関モデルに設定される700mmを上回ります。ただし、渡河可能な条件は水流、路面、進入速度、車両状態などによって異なるため、数値だけで安全性を判断することはできません。
また、岩場などを這うように進む極低速のオフロード走行では、電気モーターが低速域から最大トルクを発揮し、細かな速度制御がしやすい特性があります。低速オフロード走行を支援するクロール機能も備え、ドライバーがステアリング操作に集中しやすいよう設計されています。
ライフスタイルに合わせた最適なモデルの選び方
- 【G 580(EV)】自宅充電環境があり、静粛性や先進機能を重視する方に向く
- 【G 450 d(ディーゼル)】長距離移動の頻度が高く、燃料補給の自由度を重視する方に向く
- 【Mercedes-AMG G 63(ガソリン)】V8エンジンのサウンドや走行特性を重視する方に向く
結論として、どのモデルを選ぶべきかは、あなたがGクラスに何を求めるか、どのような使い方をするかによって変わります。

G 580 with EQ Technology(EVモデル)は、静粛性や滑らかな乗り心地、G-TURNのような先進機能を重視する方に向いています。自宅充電環境を確保でき、1日の走行距離が充電計画の範囲に収まる方に適したモデルです。

一方、週末ごとに長距離ドライブに出かけたり、キャンプやアウトドアで使う機会が多い方、あるいは充電インフラに不安がある方には、どこでも給油できる現行ディーゼルモデルのG 450 dが選択肢になります。

V8ツインターボのエキゾーストノートやAMG独自の走行特性を求める方には、Mercedes-AMG G 63が候補になります。EVにはない内燃機関ならではのフィーリングが特徴です。
| 比較項目 | G 580 with EQ Technology(EV) | G 450 d(ディーゼル) | Mercedes-AMG G 63(ガソリン) |
| パワートレイン | 各輪を個別に駆動する4モーター | 3.0L 直6ディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッド(ISG) | 4.0L V8ツインターボ+48Vマイルドハイブリッド(ISG) |
| 最高出力 | 432kW(587PS) | 270kW(367PS) | 430kW(585PS) |
| 最大トルク | 1,164N・m | 750N・m | 850N・m |
| 車両重量 | 3,120kg | 約2,540kg | 約2,570kg |
| 燃料/電源 | 電気(普通充電・CHAdeMO急速充電) | 軽油 | ハイオクガソリン |
| 一充電走行距離/燃費 | 530km(WLTCモード) | カタログ燃費は公式サイト・販売店でご確認ください | カタログ燃費は公式サイト・販売店でご確認ください |
| 最大渡河水深 | 850mm | 700mm | 700mm |
| 自宅充電の必要性 | 日常使用では自宅充電設備がほぼ必須 | 不要(給油のみ) | 不要(給油のみ) |
| 長距離移動時の補給時間 | 急速充電で約41分~106分(残量10→80%の目安) | 給油で数分程度 | 給油で数分程度 |
| 主な特徴 | 静粛性、4モーター制御、G-TURN/G-STEERINGなどEV専用機能 | 長距離移動時の航続の自由度 | V8エンジンのサウンドと走行特性 |
G 580を選ぶ前に確認したい注意点
- 車両重量は3,120kgあり、立体駐車場や機械式駐車場では重量・全幅・全高制限の確認が必要
- 全幅1,985mm、全高1,990mmのため、日本の一般的な機械式駐車場には収まらない場合が多い
- 自宅に普通充電設備を設置できるか確認が必要
- 急速充電器は出力や利用時間によって実際の充電量が異なる
- 寒冷時や高速走行、エアコン使用時には航続距離が短くなることがある
- 3トンを超える重量は、タイヤやブレーキなどの消耗品にも影響する可能性がある
- 長距離旅行では充電地点と充電時間を含めた計画が必要
- G-TURNやG-STEERINGは未舗装路向けの機能であり、一般の舗装路で日常的に使う機能ではない
まとめ

- G 580は各輪を個別に駆動する4モーターを採用し、432kW・1,164N・mを発揮する
- WLTCモードの一充電走行距離は530kmで、日本仕様は普通充電とCHAdeMO急速充電に対応する
- 最大渡河水深850mmやG-TURN、G-STEERINGなど、EVならではのオフロード機能を備える
- 一方で、3,120kgの車両重量、充電時間、自宅充電環境、長距離移動時の充電計画には注意が必要
- 静粛性や先進機能を重視するならG 580、長距離移動の自由度ならG 450 d、V8の走行感覚ならMercedes-AMG G 63が候補になる
G 580は、Gクラスの伝統的なラダーフレームとデザインを維持しながら、4モーターや大容量バッテリーを採用した独自性の高いEVです。内燃機関モデルの単純な代替ではなく、静粛性や駆動制御に異なる価値を持つ選択肢といえます。ただし、車両サイズや重量、充電環境、長距離移動の頻度を確認したうえで、自分の利用方法に合うか判断することが重要です。
自宅に充電設備を設置できる環境があり、Gクラスの存在感と静粛性・乗り心地を重視したい方にとって、G 580は選択肢の一つになります。一方で、長距離移動の自由度や、内燃機関特有のサウンドを重視する場合は、G 450 dやMercedes-AMG G 63も引き続き有力な候補です。
いずれのモデルを選んでも、Gクラスという存在がもたらす満足感は大きいはずです。ご自身のライフスタイルと照らし合わせ、最適な1台を見つけてください。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。仕様・価格は変更される場合があるため、最新情報はメルセデス・ベンツ日本の公式サイトでご確認ください。
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